読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

しゆたろの日常

しゆたろの日常についてきままにつぶやきます。創作もします。

第二十一話

小説 黄泉がえる世界

少女は早起きだった。
梓が食事の準備をしようとしたら、
キッチンから水の流れる音がした。
「誰かいるの?」
と言いながら、キッチンに入った。
すると、少女がいたのだ。まだ、時刻は午前4時半過ぎだった。
「ご、めんなさい。のどが乾いて…」
少女の手にはコップが握られていて、中には水が入っていた。
「あら、もう起きてたの?早起きさんだね。謝らないで、たくさん飲んでいいよ」
少女はお辞儀をして、水をごくごく飲み始めた。
その姿を見て、これは昨日よりも美味しいものを作らなければと梓は俄然やる気になった。
「ちょっと待っててね!これから朝ごはん作るから!」
少女はありがとうと小さく呟いて、リビングへ行った。
ちょこんと椅子に座っている。その姿がなんとも愛らしい。
作っている合間に、少女とお話ししようと声をかけた。
「だいぶ、落ち着いたね!そいえば、名前聞いてなかった!お名前いえる?」
少女は黙っていた。もしかしたら、記憶がないのかもしれないと不安に思った。
「く、くる…み」
少女、いやくるみはそう呟いた。喋るのが辛いのだろうか。
ゆっくりと喋る。あんまり話さない方がいいかなと言いながら梓は思った。
「くるみちゃんか、いい名前だね!私は梓。よろしくね!喋るの辛かったら、うなづくだけでいいからね」
そういうと彼女はうなづいた。やはり、辛いのか。
こちらが心配になるくらい、落ち着いているくるみ。親を呼んだり、泣いたりする様子は見たことがない。泣いたのは、あの時が最初で最後だった。親から逃げてきたのだろうか。そこについて触られるのは嫌だろうと思って、触れなかった。
それから2ヶ月経ったある日。
「私が手伝えることはありませんか?」とくるみが口を開いた。
驚いた、こんな小さな子が仕事を手伝いたいと言い出すなんて。
「助けてもらった恩返しのつもりで言っているのなら大丈夫よ」
「子供に働かせるわけにはいかないからな」
そう梓と隊長が言うと、
くるみは首を横に振ってそれからこう言った。
「行動班がもう1人いたほうが効率がいいと思います」
そこにも衝撃を受けた。年に似合わず、大人に意見を言ったのだ。隊長は驚いたように目を見開いたが、すぐにいつもの顔に戻って、この子は何か持っていると悟ったのか。
「確かにその通りだ。さっきは子供に働かせるわけにいかないなんて言ったが、こんな立派に意見が言えるんだ、子供なんかじゃないよな、やってみるか?」
梓は耳を疑った。何を言っているんだと。その当時、私だけが行動班だった。だから、今まで外でさまよってた子に、また外の世界へ行かせるなんてと、よみがえった人が善人である事ばかりではないと、悪人が恐ろしいということもわかっていた。だから、こう反論した。
「隊長!この子は身寄りがない子です!外から危険な状態で、助けました。なのにまた危険な外へ行かせるつもりですか!いくら考えが大人でも、彼女はまだか弱い子なのですよ!!」
「梓さん…」
初めて名前を呼ばれた。
「私、大丈夫です。」
その声はもうか細くなかった。強い意志を感じた。そして梓を見るその瞳は真っ直ぐで力強かった。梓は圧倒された。確かにこの子には何か力があると、根拠なんかはない、ただの勘だけれど。
「わかりました。くるみちゃんがそう言うなら」
「そうと決まれば、早速行動隊として働いてもらおう!」
それからどういうお仕事なのかの説明が始まった。
そして、シンからの黄泉人情報からの会議が始まる。
「今日の黄泉人はどうやらじっと動かずに静かにしているみたいです。そしてそれから…」
「では、梓とくるみ、今日は頼んだぞ!」
『はいっ!』
息のあった2人は、驚いたように見合わせた。しかし、これなら成功できると確信した。
そして、2人は黄泉人の発見現場へと足を踏み出した。